後期ゼミ課題「つくるとはかる」最終成果


後期ゼミ課題「つくるとはかる」の最終成果が出そろいました。今年は3~4人で編成された3グループに分かれて実施されましたが、それぞれのグループのテーマの中でそれぞれが主体的に役割を担いながら協働して最終提出に至れたことをまずはうれしく思います。

後期のゼミナールとプロジェクト演習の課題は「つくるとはかる」ひとつに統合されていますが、「つくる」パートと「はかる」パートとに分かれているといってもいいでしょう。「スマートとは何か?」というお題のブレストから始まり、そこから導かれた「こういうのがあったらいいのでは?」という想像から〈モノ・ハコ・コト〉を作り、それによってそれが無い状況とある状況との2つの異なる環境を用意して、そこで人の振る舞いがどう変わるかを評価・検証した結果をA4判4枚のレポートとスライドとしてまとめたものがゼミの、つまりこの1年の最終成果です。

各グループの成果を下記にまとめました。
  • 第三者からの視線を導入したタスク管理アプリケーションの効果検証(青池,奥野,相樂,田原)
やるべきことを後回しにしてしまいがちな人へ計画通り課題をこなすことを間接的に促すため、第三者からの視線を導入して自己管理能力をより向上させるためのアプリを開発する。また、これを用いた被験者実験をおこない、実際にツイート機能を用いた場合と用いていない場合との間に有意な差があるのかどうかを検証する――以上、研究目的から抜粋

登録したタスクを完了できなかった場合、懺悔ツイートを自動的に投稿してしまうアプリを開発し、それがある場合とない場合とでタスクに対する姿勢がどのように変化するかを検証した取り組みです。アプリがある方が取り組み態度に改善が見られますが、継続的に実施した場合に中弛みが生じるのか、それらはどのように改善できるのかを考えるのが次のステップかも知れません。

ちなみにですが、このグループが作成したアプリは実際にAppStoreで公開されますので、興味のある方はダウンロードしてみてください。
  • 色彩の配色からみた棚上の物品レイアウト評価システムの構築 ― 回帰分析モデルと機械学習モデルの比較 ―(大畑,嶋野,服部)
印象の良い物品レイアウトがなされた棚を短時間で構成するための支援システムを二種類構築し、これらを用いたレイアウト作業の結果として得られる棚の印象評価に有意な差があるか検証をおこなう。構築する支援システムは色の組み合わせや数、配置など、色彩の関係性をもとにした回帰式による評価モデルと、かたづいている棚とかたづいていない棚の画像の特徴を機械学習によって学習した評価モデルの二種類とした――以上、研究目的から抜粋

部屋の整理整頓作業をサポートしてくれるシステムを用意したのですが、機械学習を使ったものと、もっと単純な回帰分析によるものとの2種類を用意し、それらの比較をおこなったというものです。回帰分析のモデルは、そのモデルの概形をある仮説に基づいて立てる必要があり、そのため結果はシンプルでわかりやすい一方、抽象的で非力な感があるのは否めません。逆に機械学習のモデルは、モデルの概形についてはほとんど考えないでよく、中身はブラックボックスのままでも判別結果そのものは非常に高精度ですが、教師データの作り方を間違えたり学習データ数が少ないとトンチンカンな結果を吐きやすいです。そのあたりの難しさがダイレクトに出た取り組みだったと思いますが、得られた気づきも多かったように思います。

回帰分析のモデルは、どことどこさえ抑えれば良いかを事前に知っていて、そこの数値を最大化するような取り組み方をすれば結果も最大化されるようなモデルですから、これは職人目線による職人技的な考え方だといえるでしょう。いわゆる〈コツ〉にあたるのが説明変数です。一方で機械学習のモデルは、闇雲にやった先に良いか悪いかはわかるというようなモデルですから、ちょっと素人っぽい。これは人間の学習プロセスに例えると、よくわからないけど闇雲にやってみて良い結果がどうやったらでるか試しているのが〈機械学習モデル〉の段階で、それを経た後に自分の中で〈コツ〉が体系化されたのが〈回帰分析モデル〉の段階なのではないかというような議論がありました。赤ちゃんが言語を習得していくようなのもそんな感じですよね。
  • 仮想空間内での探索歩行体験が空間把握に与える影響に関する研究(秋葉,板倉,野老)
複雑な駅構内で道に迷う現象を軽減させるため、仮想空間内に再現した新宿駅構内をバーチャルリアリティ(VR)で訓練した被験者の空間把握能力が向上するかについて考察を行った――以上、研究目的から抜粋

新宿駅周辺の地下道をCGモデルで用意し、そこを自由歩行できるVRシステムをUnityを使って構築した取り組みです。新宿駅や渋谷駅ような巨大な空間は自分自身の位置や空間の全体像を把握するのが非常に困難で道に迷いやすいですが、このVRシステムを使用して事前に空間体験をしておくことでその迷いが軽減されるのではないか、という仮説を実験によって検証したものです。


結果的には、VR体験のある被験者群の方が移動時間も現在位置確認回数も有意に改善されたという結果になったのですが、どのような場所で迷いが発生しやすいのか、あるいはVR体験で得たどのような情報を手がかりにしたのかなどについてのより深い洞察を得ることができると尚優れた結果になったと思います。

巨大な新宿の地下空間をCGモデルで再現しただけでも大きな成果ですが、他大学との共同研究にも繋がりそうな興味深いテーマです(取り組んだ当人たちには気づいていないかも知れませんが)。

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